2008年2月2日土曜日

The Audible Past

The Audible Past: Cultural Origins of Sound Reproduction
Jonathan Sterne
082233013X

聴覚型の技法あるいは聴取の技法(audile technique, techniques of listening)の歴史を辿れば、電話以前に電信が既にネットワークに特有の親密性を生み出すメディアであったこと、listening in searchは電話以前に電信が、電信以前に間接聴診法が担っていたものであること、等々のことが主張されるということが分かるのは面白い。(けど、"listening in search"というものの「最初」は果たして間接聴診法なのかどうかイマイチ納得できない。もっと他にありそうな気がするのだけど違うのだろうか。)

電信は、情報が伝達された遠隔地において、音が再生産される機械だから「口モデル」だ、ということを言ってみた。
音響テクノロジーの起源について考察した第一章で、僕は、音響再生テクノロジーの核心にはdeafnessがあったこと、音響再生テクノロジーは口モデルから耳モデルへと移行してきたということ、という二つが一番頭に残っていて(でも聾唖教育の歴史においては、フォノトグラフについては全く触れられないらしいけど)、特に「口モデル」と「耳モデル」というのは面白い話だ、と思ったので、色々なものに応用できる思考ツールとして使えるものにならないだろうか、と思っていたので、20世紀後半以降の様々な音響テクノロジーに使おうとしてみているのだけど、あんまし上手くいかない。
とりあえず、初音ミクは、サンプリング音も使っているし、「口モデル」と「耳モデル」の「混合」らしい。
そんで、「口モデル」と「耳モデル」という二分法だけではどうやら上手くいかなさそう、ということが分かった。「(音を生み出す装置としての)楽器」を、情報入力のフェーズと、音響再生のフェーズに分けて、縦軸がその二つで、横軸が「口モデル」と「耳モデル」の二つの、四象限くらいに分割したら上手く使えるかもね、という意見を貰った。
けど、帰り道に気付いたのだけど、「口モデル」と「耳モデル」は、あくまでも19世紀の音響再生産テクノロジーを念頭に構築された理論的モデルなのだから、「楽器」にそのまま使おうとするのは、たぶんけっこう間違えている。むしろ「楽器の分類モデル」みたいなのを考えて、「古典的な楽器」と「MIDI」と「サンプラー」とかとを比較分類するのに「口モデルと耳モデル」の違いを組み込む、という使い方をすべきなのかもしれん。
「口モデル」と「耳モデル」をもっと使える形で整理して組み込んだチャート式の思考ツールのようなものを作りたい。
と思ってるのだけど、それは僕の次の論文には使えるのだろうか?

あと、ボアダムズは日本発のアフロフューチャリズムだ、という与太話も試してみたのだけど、「アフロフューチャリズム」というものはあまりにもサブカル的に固有の意味を持つものなので、ちょっとやめといたほうが良さそうだ、と思った。「アフロフューチャリズム」に込められている固有の文化的意義を軽く見過ぎていたので、これを一種の思考ツールとして使えるかも、と思ったのだけど、これはそんな汎用性のある概念ではない。

あと、なぜかPerfumeの魅力のポイントについて激しい討論が行われていたのだけど(ああいうのに「ちゃんと」対応するのは偉いと思う。感心した。)、その魅力の一つはMCだ、という僕の論拠の一つはこれ。
TBS RADIO 954 kHz|JUNK2 エレ片のコント太郎


コトノハ - 4分33秒
川原泉に「3分44秒」という題名の作品があるらしい。

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